日本からブラジルに移住され、ブラジルの社会・環境問題、移民の記録などを録り続けていらっしゃる映像作家の岡村淳氏が、「ブラジルと日本」について様々な視点からコラムを書いてくださいました。

ブラジルの日本語映画
 「ウルチモ・サムライ」

 これは現在、ブラジルの日系人社会で話題を呼んでいる映画のタイトルです。「ウルチモ」はポルトガル語で「最後の」の意味で、英語の「ラスト」と同じ。そうです。日本でもロードショー公開中の「ラスト・サムライ」でした。

 この映画の日本語字幕版の試写会を、ブラジルの日本語新聞社がサンパウロで開催しました。正直なところ私あたりは、今さらブラジルで日本語版の映画なんて…と思っていたのですが、フタを開けてみると、日本人一世のお年寄りが殺到しての大人気となりました。
 このため、サンパウロ市のショッピングセンターにあるシネコンの映画館の1館で毎日1回、日本語字幕版の「ウルチモ・サムライ」が上映されることとなったのです。

 ブラジルにやってきた日本人移民にとって、日本映画は娯楽の王様でした。赤い大鳥居で知られるサンパウロの東洋人街・リベルダーデも、日本映画館を中心に発展しました。全盛期には、東洋人街に4館もの日本映画専門館があったのです! しかし、日本人1世の高齢化、ビデオの普及、市内の治安の悪化などにより、1988年には最後の1館が幕を閉じました。

 近年はブラジルで日本映画が一般公開されることは、極めてまれになりました。ここ数年では世界的に評判になった「千と千尋の神隠し」(ブラジルのタイトルは「チヒロの旅」)ぐらいです。
 ちなみにブラジルでこれまで最も話題を呼んだ日本語映画(制作国はフランス)は、現地タイトル「官能の帝国」、大島渚監督の「愛のコリーダ」でした。
 今回はハリウッド映画とはいえ、久々に日本語映画が話題となり、私も日本語字幕版にチャレンジしました。
 平日の午後4時20分からの上映。堅気の勤め人の来られる時間ではありません。ところが! 開映20分前に切符売り場に到着しましたが、座席数200ほどの映画館はすでに満員札止め。
 「なんだ、アンタもかね?」
 顔見知りのお年寄りが何人もあぶれています。日本語でブーブー文句を言う若者たちもいます。ブラジルで日本語映画を見たがっているのは、お年寄りの移住者だけでなく、駐在員とその家族、サッカーなどの留学生など、幅が広いことに気付かされました。

 私は2回目のトライで、ようやく入場券をゲット。場内は見事に日本人の顔ばかり。何十年ぶりに映画を見た、日本語版を見るために地方から長距離バスに乗ってきた、という人たちも。
 映画のヒットを受けて、最近の日本語新聞では社説に「我々も最後の『侍』に」、投書欄に「(映画を見て)私は日本人で良かったなあ」といった調子が続いています。移住者たちは、滅びゆくサムライ集団に自分たちをオーバーラップさせてしまうのでしょう。

 それにしてもハリウッド製のこの日本語映画が、ブラジルで公開される日本語映画の「ウルチモ」にならないことを願うばかりです。
◇◆◇筆者プロフィール◇◆◇

岡村淳(おかむら・じゅん)

1958年、東京生まれ。早稲田大学第一文学部日本史学専攻卒業。1982年、日本映像記録センター(牛山純一代表)入社。処女作は日本テレビ『すばらしい世界旅行』の「ナメクジの空中サーカス 廃屋に潜む大群」。以降、ゲテモノおよび中南米の取材を主に担当して、大アマゾンの裸族、ピラニア、ポロロッカ等々を扱う。
1987年、フリーとなり、ブラジルに移民。
フリーの番組ディレクターを経て、1991年、小型ビデオカメラを用いたひとり取材に開眼。ブラジルの社会・環境問題、移民の記録にこだわり、作品をNHK、東京MXテレビ、朝日ニュースターなどの日本のTVメディアで発表。近年は自主制作によるドキュメンタリー作りを続けている。
自主制作の代表作に「郷愁は夢のなかで」(1998年)、「ブラジルの土に生きて」(2000年)、「赤い大地の仲間たち フマニタス25年の歩み」(2002年)、5時間15分の長編「アマゾンの読経」(2004年)など。
作品の上映には制作責任者である岡村の立会いを原則として「ライブ上映会」と呼ばれ、「ひとりでもご覧になりたい方がいればおうかがいする」という方針で、これまで日本、ブラジル、台湾、アメリカ、チリ、アルゼンチン、オランダでライブ上映会を実施。

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