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日本からブラジルに移住され、ブラジルの社会・環境問題、移民の記録などを録り続けていらっしゃる映像作家の岡村淳氏の「住めばブラジル」。様々な視点からコラムを書いてくださいました。

サンパウロの書物の祭典!!
 全世界で1000万部以上の売上げを誇るブラジル人のベストセラー作家をご存知ですか? 「アルケミスト 」や 「星の巡礼 」(いずれも角川文庫)のパウロ・コエーリョさん。世界的に知られるブラジル人は、サッカー選手だけではないのです。

 今年5月、サンパウロで「第18回国際図書ビエンナーレ」が開かれました。
 ブラジル各地を始め、ヨーロッパ諸国や日本からも出版社・書店・政府関連機関がさまざまな書籍を出品、総数は何と15万種。このビエンナーレに合わせて発売される新刊書も2000種類におよびます。
 会場のイミグランテス展示センターには320ものスタンドが設置され、延べ11日間の会期中の訪問者総数は50万人! 書籍の展示・販売の他に著者らによるサイン会の総数は330、さらに100以上の講演・討論会が開かれるなど、まさしくブラジルの知的文化の祭典です。

 ところでブラジル人は年に何冊ぐらい、本を買うのでしょうか?
 平均というのがむずかしいブラジルですが、人口1億7000万人のうち、昨年、1冊でも本を買った人は「ほんの」10パーセント…。そんなブラジル人の書籍購買をアップさせようともくろむ図書ビエンナーレの主催者は今回、「子供の読者数を増やす」「ブラジル人の作家を評価する 」という方針をとりました。

 さて、普段から人口稠密の大都市サンパウロに暮らす身としては、週末はなるべく人ごみを避けて過ごしたいもの。しかし子供たちに書物がふんだんにある空間を体験させたい、という親心もあります。
 土曜の午前中なら激しい人出もないだろうと、家族4人で出かけてみました。ところが、同じような狙いの子供連れや学生たち、地方からの訪問者などで、最寄りの地下鉄の駅から会場までの無料バスや入場券売場はすでに長蛇の列。
 本好きを自認するつもりの私でしたが、1万8000平米以上の会場にひしめくスタンドと膨大な書物の量に圧倒されました。少しは自分の関心分野の本も探そうという思いはあきらめ、子供の付き添いがメインとなります。

 主催者の狙いを受けて、子供のお小遣いと親のサイフを緩めさせようという展示が、やたらに目につきます。
 大量の書物を見ると、やたらにトイレに行きたくなるという人が少なからずいるようですが、そんな知人たちを思い出しながら会場にいくつも設置されたトイレのあたりに目をやると、特に女性の方は延々とした列で気の毒なくらい。

 出品した出版社をジャンル別に見ると、1番多いのが「自己開発・心理・ジェンダー」。次に 「社会科学・哲学 」、「宗教」、 「辞書・参考書 」、「教育・社会福祉」といったあたりが並びます。日本からは国際交流基金がスタンドを出していますが、ここを訪ねるブラジル人の関心は日本語、折り紙、マンガが多いといいます。

 この連載のための写真を撮りに、今度は平日に訪ねてみたのですが、平日は課外授業として訪れる小中学生の団体で、これまたギッシリ。迷子のアナウンスがひっきりなしに。
 会場を隈なくまわってみて気づいたのは、大量の新刊書を、本そのものを素材として用いてラセン形や星型などに積み上げたディスプレイがあちこちに見られることでした。本を生け花感覚で組み合わせたオブジェもあります。
 ラストサムライ系の日本人である私には、抵抗のある書籍の扱いもありました。低くした床面にセールス中の本を並べてライトアップして上に強化ガラスを敷き、その上を踏みながらマイクを持った男が客引きを行なう、という光景です。ガラス越しとはいえ、本を踏むなんて…。枕にするのはまだ許せるけれど。
 書物の扱い方にもお国の文化が反映されるのだな、と教わりました。

 2年に1度のサンパウロ国際図書ビエンナーレ。日本の皆さん、次回は「ちょっと本を見に、ブラジルまで」なんていうのも、粋なのでは?
◇◆◇筆者プロフィール◇◆◇

岡村淳(おかむら・じゅん)

1958年、東京生まれ。早稲田大学第一文学部日本史学専攻卒業。1982年、日本映像記録センター(牛山純一代表)入社。処女作は日本テレビ『すばらしい世界旅行』の「ナメクジの空中サーカス 廃屋に潜む大群」。以降、ゲテモノおよび中南米の取材を主に担当して、大アマゾンの裸族、ピラニア、ポロロッカ等々を扱う。
1987年、フリーとなり、ブラジルに移民。
フリーの番組ディレクターを経て、1991年、小型ビデオカメラを用いたひとり取材に開眼。ブラジルの社会・環境問題、移民の記録にこだわり、作品をNHK、東京MXテレビ、朝日ニュースターなどの日本のTVメディアで発表。近年は自主制作によるドキュメンタリー作りを続けている。
自主制作の代表作に「郷愁は夢のなかで」(1998年)、「ブラジルの土に生きて」(2000年)、「赤い大地の仲間たち フマニタス25年の歩み」(2002年)、5時間15分の長編「アマゾンの読経」(2004年)など。
作品の上映には制作責任者である岡村の立会いを原則として「ライブ上映会」と呼ばれ、「ひとりでもご覧になりたい方がいればおうかがいする」という方針で、これまで日本、ブラジル、台湾、アメリカ、チリ、アルゼンチン、オランダでライブ上映会を実施。

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